医療従事者として新型コロナウイルスのワクチン接種を受けて

新型コロナウイルスの、日本での医療関係者のためのワクチン接種が2月17日から開始されました。当初は、医療従事者向け先行接種と併せて、接種後の健康状況調査を行う対象となっている、国立病院機構・地域医療機能推進機構(JCHO)・労働者健康安全機構(労災病院)で接種が始まりました。一般病院では、3月上旬から新型コロナウイルスの患者さんを診察している施設から開始されました。

4月中旬になり、当院にもようやく新型コロナウイルスワクチン接種の案内が福島区医師会から来ました。当初、関西電力病院またはJCHO大阪病院で、4月21日、22日、23日の3日間で予定されていましたが、1週間ぐらい前に突然キャンセルとなりました。その理由はほかの開業医の先生の施設と異なり、常勤職員だけでも100名以上在籍しており、そのため上記のどちらの施設も、沢山の職員を短期間に接種できないということになりました。その後医師のみ受けることが可能とのことで、外来勤務のない先生や、休みの先生方が関西電力病院にて第1回目の接種を4月21日、22日、23日に受けることになりました。私は初日の4月21日水曜日に受けに行きました。時間になると、接種会場の入り口付近には、沢山の福島区の医療従事者の方が待っておられました。接種はスムースに行き、刺した時の痛みが少しありましたが、アナフィラキシーショック等の副反応はありませんでした。受けていた他の数十人の人に誰もそのような副反応は起こりませんでした。次の日に接種部位の痛みが少しありましたが、2、3日で軽快しました。

第2回目の接種は、1回目から3週間後の5月12日水曜日に受けました。当日は前回と同様で、針を刺した時の少しの痛みだけでした。夜になっても副反応は出なかったので安心していました。私はもうすぐ70歳になる高齢者に入りますので、発熱等の副作用はないものだと思っていました。しかし翌日の午前中から体に何とも言えない倦怠感が出てきました。そして、微熱があり、夕方には37.3度の発熱を認めました。私の平熱は35度台かせいぜい36.0度前後なので風邪をひいて熱があると思い、測定しても37.5度とかの事はよくありました。当院の薬局から手渡されていたカロナールを1錠ずつ3回服用し、ある程度熱は改善しました。翌日の朝も何とも言えない倦怠感が残っており、副反応とはこういうものかと思いました。翌14日金曜日の午前中はまだ少し倦怠感がありましたが、午後にはほとんどそれもなくなりました。私の娘は30代半ばで、新型コロナウイルス患者さん受け入れている大阪府下の公的病院に勤務しているために、3月初旬と3月下旬に新型コロナウイルスワクチン接種を受けました。2回目の接種後38度の発熱があり、かなり強い倦怠感が出て翌々日まで熱が続いたそうです。新型コロナウイルスの副反応は若い人に多いと言われており、また女性に多いとされています。今後新型コロナウイルスのワクチン接種を受けられる方へ参考になればと思い、今回のブログに書きました。

世界的に見て、日本の新型コロナウイルスのワクチン接種は非常に遅れています。OECD先進37カ国の中では最低レベルで、2021年5月13日現在のデータによれば、世界で最も接種の進んだイスラエルでは1回でも接種した人は国民全体の62.8%で、以下イギリス53.2%、アラブ首長国連邦51.4%と続いています。米国は46.2%で、残念ながら日本は3.2%とインド10.1%、韓国7.3%よりもさらに低い状態です。世界では131位という不名誉な数字です。この遅れの原因はどこにあるのかを考えると、1番目は海外で承認されたワクチンを日本ですぐに承認できず、日本での臨床治験が必要なためです。韓国や台湾では、アメリカのFDAが薬を承認すれば自動的に国内で治験無しに承認されていると聞きました。日本の新薬の審査方法では乳がんに対する新薬もドラッグラグと呼ばれる、タイムラグがいつも生じています。以前韓国の学会に参加した際に、日本ではまだ使用されていない新薬が韓国や台湾ではすでに使用許可がおりており、驚いたことがありました。もう一つの問題点は公平性を期するために、都道府県に一律に分配し、自治体にその接種を任せたことです。国がマイナンバーを使って一元的に管理し、デジタルで管理する必要があると思います。この原稿を書いている5月17日から東京、大阪での大規模接種センターでの予約が開始されました。この予約は自治体の予約と2重になっていてもチェックするシステムがありません。予約に混乱を生じるのは必至と思います。新型コロナウイルスのワクチン接種が広く国民に行き届き、以前の生活が一日も早く戻ってもらいたいと思います。

大阪ブレストクリニック 院長 芝 英一 【認定資格】 大阪大学医学博士 日本外科学会認定医、専門医、指導医 日本乳癌学会専門医・指導医 NPO法人日本乳がん検診精度管理中央機構認定読影医 日本内分泌・甲状腺外科専門医