新型コロナウイルス第6波
日本に新型コロナウイルスが中国武漢から入ってきて、2年3ヶ月が経過しています。厚生労働省の、2022年3月23日現在の日本での感染者数は615万人で、死亡者は2万7千人あまりでした。100年前のスペイン風邪(インフルエンザ)が世界的に感染拡大した際には、1918年3月から約3年経過して1921年に収束したと報道されています。したがって、約3年間は世界中でパンデミックが起こっていたことになります。
現在の新型コロナウイルスの感染はオミクロン株で、多くの患者さんは無症状から軽症状で済む事が知られていますが、合併症のある人は肺炎を起こして死亡することもあるようです。国立感染研究所の発表によると、オミクロン株の症状の特徴は以下の通りで、通常の新型コロナウイルス感染症と以下の点が異なることがわかっています。
発熱・咳・だるさ・のどの痛みなどの風邪症状が中心である点。
通常株より潜伏期間が短い点:アメリカの報告例によると潜伏期間の中央値は3日としています。通常の新型コロナが5日ほどと考えられているので、2日ほど早いということになります。
若年での発症・入院数が増加している点: 日本でも2022年1月から成人だけでなく、17歳以下の若年者や小児での発症例も急増してきています。
重症化するまでの期間が短い点: 広島県からの報告によると、陽性判明から2〜3日後に中等症II(酸素投与が必要なレベル)になるのが最も多く、これまでの新型コロナ感染症の特徴である「7日前後から重症化」を大幅に短縮しています。また味覚嗅覚障害が通常株・デルタ株に比べて少ないのも特徴の1つです。さらに感染性ウイルス排出期間(体内のウイルス量が検査基準値以下になるまでの期間)も他の株よりも短いのも特徴の1つとされています。
当院での第6波の影響は2022年3月24日現在、職員自身の感染が4名出ています。そのうち3名は家族内感染でした。濃厚接触者は4名ありました。オミクロン株は感染力が高いために、家族に感染者がいて濃厚接触者になると、かなりの確率で感染が起こるようです。職員本人が感染したり、濃厚接触者になると通常の医療業務に差し支えて人員のやりくりが大変になります。特に、小学生や保育所に通うお子様のいる家庭で濃厚接触者となり、仕事を休むことが増えています。
大阪市内の診療所で、新型コロナウイルスの最前線で診察している大学時代の研究室の後輩と話をする機会がありました。オミクロン株では、鼻水だけで来た患者さんに念のためにPCR検査(その診療所ではPCRの検査機器を自院に設置しています)をしたところ、陽性の事もあるそうです。また、ほとんど症状の無い人もたくさんいるそうです。
感染症には感染性の重篤な病気から軽い病気まで、1類から5類の5種類に分類されています。1類には、エボラ出血熱のようにきわめて致死率の高い伝染病が含まれています。現在「2類相当」の新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、入院勧告などが必要ない「5類」(季節性インフルエンザなど)に引き下げる見直し論が浮上しています。これは、上記のようなオミクロン株では軽症の患者さんが多いからです。1類から4類までは保健所に届ける義務があります。引き下げた場合、保健所や医療機関の負担は減るが、PCR検査や治療費の一部が自己負担になる可能性が高く、受診控えで感染者が増えるリスクがあります。また、多額の治療費を心配する生活困窮者の支援団体からは不安の声も上がることが考えられますので、これらの折衷案として、5類には入れるが検査費用や治療費を公費負担にすれば良いとこ取りで、医療機関、保健所の負担も減り、受診者の負担も今まで通りで、社会経済活動も継続しやすい利点があります。
1日も早く新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、以前の日常が早く取り戻せることを切望します。