マンモグラフィ検診の受診間隔は毎年が良い
2024年2月に医学雑誌「Radiology」に 米国における乳癌検診の受診間隔や、受診年齢に関する論文が発表されました。この論文は、米国のダートマス大学医学部放射線科のMonticciolo先生が発表したもので、結論は40歳~79歳の女性が毎年乳癌検診をマンモグラフィで受けると、死亡率減少効果が予測されるというものでした。
米国では、乳癌は女性の癌死亡数で2023年には第2位で、およそ1年に4万3千人の人が乳癌で死亡すると考えられています。マンモグラフィによる乳癌検診を受診する方のうち、少なくても2年に1回受ける受診者は約70%と考えられ、毎年受ける人の割合は50%以下です。2009年に米国予防サービス特別委員会(USPSTF)が50歳からの隔年検診を推奨したために、マンモグラフィ検診の受診率は急落しています。
今回の研究で Monticciolo先生は発がんの自然史や、コンピューターシミュレーションを活用した米国のCISNETプロジェクト(Cancer Intervention and Surveillance Modeling Network)のモデルに基づく解析データを用いて、4つの設定下で二次解析を行い、それぞれの設定の転帰を比較検討しました。4つの設定とは、マンモグラフィ検診を、1)50〜74歳の間に隔年で受診、2)40〜74歳の間に隔年で受診、3)40〜74歳の間に毎年受診、4)40〜79歳の間に毎年受診の4条件でした。
CISNETから得られた主な結果は以下の通りでした。40歳から79歳まで毎年マンモグラフィ検診を受けると、
・40〜79歳の間に毎年検診を受けることで死亡リスクは41.7%低下。
・40〜74歳の間に毎年検診を受けることで死亡リスクは37.0%低下。
・40~74歳まで隔年で検診を受けると死亡リスクは30.0%低下。
・50~74歳まで隔年で検診を受けると死亡リスクは25.4%低下。
40〜79歳の間に毎年検診を受けた場合には、4つの設定の中で偽陽性率(乳癌でない人を精密検査が必要と判定する率)が最も低く(6.5%)、がんの生検で良性と判定される割合も最も低かったです(0.88%)。マンモグラフィ検診の要精査率は10%以下であり、3Dマンモグラフィ検診を毎年受けることで要精検率は6.5%に低下することが判明しました。
Monticciolo先生は、マンモグラフィ検診を受ければ乳癌を早期に発見でき、早期であれば治療が容易であり、大きな手術や化学療法をせずに済む。それゆえ、がんを早期に発見する方向へシフトするのは良い考えであり、マンモグラフィ検診はそのためのものなのだと述べています。
上記は米国でのシミュレーションのデータです。日本では自治体検診は2年に1回とされており、これは検診の費用対効果からこの様な指針が出されています。日本の乳癌の罹患率は欧米の罹患率にかなり近づいており、上記の発表から 隔年の自治体検診の間に、乳癌検診を受けることを勧められると考えます。