米国テキサス州で開催された 第47回サンアントニオ ブレストキャンサーシンポジウムに参加して
2024年12月10日より12月13日まで、アメリカテキサス州 サンアントニオで開催されたサンアントニオ ブレストキャンサー シンポジウム(San Antonio Breast Cancer Symposium)に参加してきました。この学会は、乳癌単独の国際学会では世界で1番大きな学会で、私は前回コロナ禍前の2019年12月に参加していましたので、5年ぶりの参加です。この間国内の学会には参加していましたが、国際学会は5年ぶりの参加でした。
世界中 約100カ国から、約1万人の参加者で開催されました。外科に関する演題では、あまり新しい発表はありませんでした。腋窩リンパ節郭清に関しては、縮小の方向に向かっています。またセンチネルリンパ節生検に関しても、不要な患者さんには行わない方向に向かっているようです。また化学療法に関しても、アントラサイクリン(抗がん性抗生物質)はできるだけ省く方向になってきています。今月は、この学会で発表された代表的な演題の一つについてお話をします。
この演題は、ホルモンレセプター陽性、Her-2陰性の再発乳癌患者さんで、今までは化学療法の適応と考えられる高リスクの再発患者さんに対しての演題です。
今回ドイツのSibylle Loibl先生は、無作為化フェーズ3試験であるPADMA試験で再発後の1次治療として、内分泌療法とCDK4/6阻害薬 パルボシクリブの併用療法(化学療法非使用群)は、まず化学療法を行い、その後に内分泌療法を維持療法として行うよりも治療成功期間(Time to treatment-failure:TTF)と無増悪生存期間(PFS)を有意に延長できることを明らかにしました。PADMA試験は、化学療法の適応のある高リスク転移乳癌の1次治療として、CDK4/6阻害薬+内分泌療法を化学療法単独(±維持療法としての内分泌療法)と比較した、初の前向き多施設 無作為化 非盲検第IV相試験です。また全生存期間(OS)も、内分泌療法とパルボシクリブの併用で良好な傾向が認められました。今後ホルモンレセプター陽性、Her-2陰性の再発乳癌患者さんで、内臓転移があるような症例に対しても、積極的に内分泌療法にCDK4/6阻害剤を加える治療が行われる事になると考えられます。